宝石箱
古い引き出しの奥
目立たないベージュの平たい箱の
蓋を開けたら
亡くなった妻の
首飾り、ブローチ、イヤリングが
入っていた
金木犀の香りにつつまれて
夕べの明かりの中にキラキラと
青白く輝いていた
小さなノートに
出会った時から愛していました、と
書いてくれてから
もう13年経った
転校生だった私が話しかけた時
頬を赤く染めた貴女
2人とも東京に進学して
また出会い、結婚した
貴女が好きだった
ショパンのノクターンを聴くと
30歳の時に一緒に歩いたパリの街角の
眩い明かりを思い出す
首飾りの鎖に沿って指先を滑らすと
貴女の頸を感じ
イヤリングに指の腹を押し付けると
柔らかい耳たぶを思い出す
あたりの暗さに気づいて
シャンデリアを点灯けると
宝石は暖かい輝きに変わった
コメントを残す