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東工大地球惑星科学科「統計力学」授業終了

8 6月

8月1日で授業を終えました。

期末レポート問題は

期末レポート問題2022

です。8月15日が提出期限です。

 

第1回の講義ノートをアップました。

第2回の講義ノートをアップました。

第3回の講義ノートをアップました。

第4回の講義ノートをアップました。いよいよ「統計力学」に入ります。

第5回の講義ノートをアップました。

第6回の講義ノートをアップました。

第7回の講義ノートをアップました。いよいよ量子統計です。

第8回の講義ノートをアップました。 L5B

第9回の講義ノートをアップました。L6A

第10回講義ノートをアップました。L6B

第11回講義ノートをアップました。そうまとめ

第12回講義ノートをアップました。コンパクト星L7

第13回講義ノートをアップました。初期宇宙L8

第14回講義ノートをアップました。マクスウェルの悪魔

 

 

 

 

2Q の授業を6月13日(月)から開講します。毎週月曜日と木曜日です。以下にシラバスを転記します。

 初学者向けに,統計力学の基本的な考え方の理解をまず最初に目指す。熱力学の復習からはじめ、古典的な気体分子運動論,確率分布の考え方を導入し,統計集合を理解する。その後,標準的な小正準集合,正準集合,大正準集合と進み,量子統計まで学ぶ。最後にいくつかの典型的な応用例を紹介する。授業1回あたり講義2時限、演習2時限を行う。

【到達目標】
地球惑星科学の勉強や研究において有用となる,地球惑星科学関連知識としての統計力学を修得することを目標とする。

キーワード

熱力学、気体分子運動論,確率分布,小正準集合,正準集合,大正準集合、エントロピ-、自由エネルギ-、分配関数

授業の始めに前回のまとめを行い、途中で簡単な宿題を出して理解の助けにする。最後に全体のまとめを行ってから期末試験を行う。

第1回

熱力学の復習(1)

第1法則、熱とは何か、L1A

第2回

熱力学の復習(2)

カルノーの定理、エントロピ-L1B

第3回

気体分子運動論

マクスウェル分布、ベルヌイの式 L2

第4回

熱力学と統計力学の関係

マクロとミクロの物理 L3A

第5回

ミクロカノニカル統計

等重率、ボルツマン公式、理想気体の例L3Bpdf

第6回

カノニカル統計(1)

ミクロカノニカル統計からの導出、自由エネルギ-L4

第7回

カノニカル統計(2)

分配関数、ボルツマン統計

第8回

カノニカル統計(3)

例題:自由粒子、調和振動子

第9回

大カノニカル統計

ギブスの自由エネルギ-、化学ポテンシャル

第10回

量子統計(1)

ボース統計、ボース凝縮  L5A

第11回

量子統計(2)

フェルミ統計、フェルミ縮退

第12回

統計力学の宇宙物理への応用(1)

白色矮星、中性子星、チャンドラセカール限界

第13回

統計力学の宇宙物理への応用(2)

初期宇宙における元素合成

第14回

総まとめ

ポイントを復習する

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ本学の学修規程で定められた時間を目安に行う。

教科書

特になし

参考書、講義資料等

・「熱力学I」,田崎晴明、培風館
・「熱学・統計力学」,久保亮五,裳華房

成績評価の基準及び方法

講義で課される宿題のレポートと最終レポートの成績(合わせて50%), 及び演習時の課題への取り組みと小テストの成績(合わせて50%)に基づいて評価する。

「寺田寅彦の『藤の実』を読む」(窮理舎)を読了

9 1月

 

 窮理舎の伊崎さんから、藤の実を送っていただきました。藤棚からたくさんぶら下がったのは見たことがあるのですが、間近でみたのは初めてです。

 鞘のヒネリが種が遠方に飛ぶポイントであると平田森三の解説に書いてありますが、実物を見て得心しました。多分、このヒネリに微妙な臨界点があり、それが一斉に爆ぜる原因なのだろうと思います。

 原文は、青空文庫

https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2339_13490.html

にあります。

寺田寅彦の短い随筆について、寅彦研究者、物理学者、植物学者、文学者4者がそれぞれの角度から読んでいます。最後に寅彦の弟子であり共同研究者でもある平田森三による子供向けの解説を再録し、藤の実が弾ける仕組みを詳細に示してくれます。それが一斉に弾けるところは謎のままです。

 その中で高知県立文学館の川島さんが「季語と潮時」の相関を指摘しておられたのを鋭いと感心しました。

藤の実が弾けることは毎年繰り返されます。藤は効率的に子孫を残すために遠くまで種を飛ばすように進化していったはずです。そのためには湿度、温度など多くの条件が最適になった絶妙な瞬間にさやが弾けるようになっていったでしょう。その最適条件を満たす時間は短く、側から見ていると申し合わせてように一斉に弾けるのだろうと思います。

 季語も同様で、毎年季節がめぐる中で俳人たちによって選び抜かれていったものなのでしょう。「季語と潮時」の成立にはダーウィン的なものがあると感じます。

寺田寅彦の「物理学序説」を読む

30 12月

寅彦の命日であるこの大晦日を期して上記の本を窮理舎から上梓しました。https://kyuurisha.com/info/newbook-info3/

 東工大の科学史の研究室のセミナーでZoom講演をしました。火ゼミ報告を引用します。

物理の研究をしていて方向性を見失い、気づいてみると欧米の雑誌に出ている論文を読んで、とりあえずできそうな問題を見つけ解いて論文にして、その年を切り抜けている人が結構いるような気がする。物理学の分野に特段の流行が見受けられない 2020 年現在、そのような人の研究にはかなり苦しいものがあると思う。 

そのような人の初心に寺田寅彦が蘇ってこないだろ うか? 寅彦は自然を直接観察し自作の実験装置を工 夫し、独自の新境地を開いた物理学者である。彼の随 筆が秀逸であったために、とかく優雅な「眺める物理 学者」のイメージが強いが、正統の物理の分野でも大 きな貢献をしている。1913 年に X 線回折によるブラグ 反射と同じものを独立に発見している。その実験方法 も回折像の解析方法も独創的であるとラウエからの高 い評価も得ている。ただし、わずか 2 年で研究を弟子 の西川正治に委ねている。 

さらに物理学の方法論についても体系だった思想を 持っていたスケールの大きい物理学者であった。その 思想の内容が未完の書「物理学序説」である。この序 説は、初学者に向けた語り口で述べられているが、実 は同時代の研究者へも鋭く問いかけている。 

現代の理論物理学は、高度に数学化されている。学 問の発展の段階では、その数学化が威力を発揮してき たことは否定できないし、実際に一般相対性理論では 大成功をおさめた。肌感覚では 1980 年代からその傾 向が極端になり、かつやり尽くされたように思う。 

ここで一旦立ち止まり集団思考から社会的距離をと り、自然を直視して、数学の言葉でなく自然言語で物 理を語り、研究の新しい芽を探してみてはどうだろう か? 

最後に寅彦の俳句を一つ紹介する。 

椎の影 蔽ひ尽して 池寒し

水島寒月 

「量子力学と私」朝永振一郎著、江沢洋編 読了

16 9月

 中に納められている「光子の裁判」などいくつかは既に読んでいましたが、今回は江沢編に惹かれて読み直しました。

 注目するのは、朝永が量子力学革命の時期を1925年から1930年に限定していることです。それ以前の、プランク、ドブロイ、ボーアなどのいわゆる前期量子論を勘定に入れていません。ハイゼンベルグ、シュレーディンガーとディラックによる現代でも物理として通用するものを量子力学と呼んでいます。

 京都の湯川・朝永はその革命について行けたけれども、東京地区では、学部卒くらいの若い人たちが「物理学文献会」という輪講を理化学研究所の一室で夜勉強していた状況だったようです。

ルクレチウス著「物の本質について」(樋口勝彦訳、岩波青)読了

1 5月

ローマ共和制時代(前94ー55)、エピクロス派の哲学者が残した詩を散文に翻訳したもの。原子論に基づく無神論を説き、自然を観察し考察する。1417年に修道院で写本が発見され、ルネッサンスの引き金を引いた、と言う説もある。物理学者のケルビンも愛読したと言う。とにかく生き生きとして面白い。原子に色がないことの論証が気に入った。寺田寅彦に影響を与えた。

雑誌「現代思想」で量子計算を哲学してみる

28 1月

私は、D.ドイチがその概念を発表して10年後の1995年に量子計算の分野に参入した。P.ショアが素因数分解の量子アルゴリズムを発表して間もなくのことである。その頃、日本で量子情報/計算の第一次ブームが起きた。

 この数年の出来事は第二次ブームというべきで、メンバーも相当入れ替わっている。メディアでも盛んに報じられ、一般の人の間にも関心が高まり、「Googleが何かすごいことをやったらしい」とか、「巨額の国家予算が投じられているそうだ」「仮想通貨は危ない」などと、日常の話題にしている。

 しかし、分かって話をしているわけでもないらしい。そこで、本稿では2節から7節まで、量子計算の簡単な解説をする。一方、専門家は研究のターゲットを絞り込んで先陣競争をしがちである。

こういう時期には、量子計算全体を俯瞰して、それぞれの専門性という縦糸に横串を入れるという意味の「哲学」の意義が出てくる、と考えて第8節をしたためる。2節から7節までをわかっている人は、8節だけを批判的に読んでいただければ、幸いである。

放送大学面接授業「若きアインシュタインの考え方」終了

11 1月

細谷エッセイ

昨年11月に上記授業が無事に終了し、今年の正月明けに

21人分のレポートの採点を提出いたしました。

レポート問題は上記に載せました。

講義のタイトルが、文学的だったためか、数式抜きでアインシュタインの考え方を話してくれると期待して受講してくださった方もいらして、正直慌てました。

結局、授業をソフトな話とハードな数式に分割しながら、なんとか満足していただけたかな、と思っています。

レポートと言っても、「序論、本論、結論」の論文形式をとり、

自分の考えも入れる、エッセイを要求しました。

課題の一つについて:

寺田寅彦の文章を参考に、1905年のアインシュタイン論文のアイデアの核心は何であったか述べよ。

 

に対して、

 

光の速度が慣性系によらず一定であることを光の性質ではなく、時空という実在の性質であると喝破したことが核心である。

 

という結論のエッセイがあり、感心しました。

 

 

幻の「解析力学」蘇る

18 12月

ようやく「解析力学」の教科書がオンデマンド出版で売り出されました。アマゾンのサイトを見てください。

編集後のPDFも見れます。

https://www.amazon.co.jp/dp/4909624031/

https://www.yamanami.tokyo/analytical_machanics/

「解析力学」内容紹介

学部学生を対象に、解析力学独特の考え方の導入部に神経を使ったつもりである。最小作用を考える動機と起源など初学者が疑問に思うことを、実際に受講した東工大の学生から受けた質問を元に取り上げた。その一方で、類書にないトピックも取り上げた。 例えば、摩擦のある系、ラグランジュの未定係数法の正当化と抗力などである。最後は、量子力学による最小作用の原理の正当化で締めくくった。

放送大学面接授業始10月23日

18 10月

「若きアンシュタインの考え方」というタイトルで、1905年の特殊相対性理論に関する論文を、内山龍雄訳(岩波文庫)をテキストにして読みます。

第一回の資料:2019第一回

左:特許局で勤務するアインシュタイン(椅子がない!)

26歳のアインシュタインが、たどった考え方を追いながら、対話型の授業を行います。

 

10月23日(水)14:00から

11月6日(水)13日(水)20日(水)

場所 渋谷学習センター(AP渋谷道玄坂13Fの方です)

<現在>という謎(勁草書房)に寄稿しました

20 9月

時間の空間化批判という副題が付いていて、哲学者の森田邦久さんが編集しています。哲学者と物理学者が時間について論じ、対話したものです。

私は、第3章 現代物理学における「いま」を執筆しました。これは、東京大学で行われた吉田夏彦先生の主宰するDDD会での講演、森田さんが企画した九州大学でのセミナーに基づくものです。

内容は、1947年に渡辺慧さんが書かれた「時」という本(河出書房)の中に収められた常識人と物理学者の間の「時間対話」を70年タイムスリップさせたものです。

現代物理学の数学的な記述の中から滑り落ちてしまった、「今」の概念の復権の芽を量子力学と熱力学の操作的な理論構成の中に見出そうとします。

この論文集の中の平井さんによるベルグソンの時間観と不思議な符丁があります。キーワードは「観測者」です。

以下をクリックしてくださると、校正の方が可愛いと言ってくださった手書きの「マクスウェルの悪魔ちゃん」です。図3.2 マクスウェルの悪魔