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ルクレチウス著「物の本質について」(樋口勝彦訳、岩波青)読了

1 5月

ローマ共和制時代(前94ー55)、エピクロス派の哲学者が残した詩を散文に翻訳したもの。原子論に基づく無神論を説き、自然を観察し考察する。1417年に修道院で写本が発見され、ルネッサンスの引き金を引いた、と言う説もある。物理学者のケルビンも愛読したと言う。とにかく生き生きとして面白い。原子に色がないことの論証が気に入った。寺田寅彦に影響を与えた。

雑誌「現代思想」で量子計算を哲学してみる

28 1月

私は、D.ドイチがその概念を発表して10年後の1995年に量子計算の分野に参入した。P.ショアが素因数分解の量子アルゴリズムを発表して間もなくのことである。その頃、日本で量子情報/計算の第一次ブームが起きた。

 この数年の出来事は第二次ブームというべきで、メンバーも相当入れ替わっている。メディアでも盛んに報じられ、一般の人の間にも関心が高まり、「Googleが何かすごいことをやったらしい」とか、「巨額の国家予算が投じられているそうだ」「仮想通貨は危ない」などと、日常の話題にしている。

 しかし、分かって話をしているわけでもないらしい。そこで、本稿では2節から7節まで、量子計算の簡単な解説をする。一方、専門家は研究のターゲットを絞り込んで先陣競争をしがちである。

こういう時期には、量子計算全体を俯瞰して、それぞれの専門性という縦糸に横串を入れるという意味の「哲学」の意義が出てくる、と考えて第8節をしたためる。2節から7節までをわかっている人は、8節だけを批判的に読んでいただければ、幸いである。

放送大学面接授業「若きアインシュタインの考え方」終了

11 1月

細谷エッセイ

昨年11月に上記授業が無事に終了し、今年の正月明けに

21人分のレポートの採点を提出いたしました。

レポート問題は上記に載せました。

講義のタイトルが、文学的だったためか、数式抜きでアインシュタインの考え方を話してくれると期待して受講してくださった方もいらして、正直慌てました。

結局、授業をソフトな話とハードな数式に分割しながら、なんとか満足していただけたかな、と思っています。

レポートと言っても、「序論、本論、結論」の論文形式をとり、

自分の考えも入れる、エッセイを要求しました。

課題の一つについて:

寺田寅彦の文章を参考に、1905年のアインシュタイン論文のアイデアの核心は何であったか述べよ。

 

に対して、

 

光の速度が慣性系によらず一定であることを光の性質ではなく、時空という実在の性質であると喝破したことが核心である。

 

という結論のエッセイがあり、感心しました。

 

 

幻の「解析力学」蘇る

18 12月

ようやく「解析力学」の教科書がオンデマンド出版で売り出されました。アマゾンのサイトを見てください。

編集後のPDFも見れます。

https://www.amazon.co.jp/dp/4909624031/

https://www.yamanami.tokyo/analytical_machanics/

「解析力学」内容紹介

学部学生を対象に、解析力学独特の考え方の導入部に神経を使ったつもりである。最小作用を考える動機と起源など初学者が疑問に思うことを、実際に受講した東工大の学生から受けた質問を元に取り上げた。その一方で、類書にないトピックも取り上げた。 例えば、摩擦のある系、ラグランジュの未定係数法の正当化と抗力などである。最後は、量子力学による最小作用の原理の正当化で締めくくった。

放送大学面接授業始10月23日

18 10月

「若きアンシュタインの考え方」というタイトルで、1905年の特殊相対性理論に関する論文を、内山龍雄訳(岩波文庫)をテキストにして読みます。

第一回の資料:2019第一回

左:特許局で勤務するアインシュタイン(椅子がない!)

26歳のアインシュタインが、たどった考え方を追いながら、対話型の授業を行います。

 

10月23日(水)14:00から

11月6日(水)13日(水)20日(水)

場所 渋谷学習センター(AP渋谷道玄坂13Fの方です)

<現在>という謎(勁草書房)に寄稿しました

20 9月

時間の空間化批判という副題が付いていて、哲学者の森田邦久さんが編集しています。哲学者と物理学者が時間について論じ、対話したものです。

私は、第3章 現代物理学における「いま」を執筆しました。これは、東京大学で行われた吉田夏彦先生の主宰するDDD会での講演、森田さんが企画した九州大学でのセミナーに基づくものです。

内容は、1947年に渡辺慧さんが書かれた「時」という本(河出書房)の中に収められた常識人と物理学者の間の「時間対話」を70年タイムスリップさせたものです。

現代物理学の数学的な記述の中から滑り落ちてしまった、「今」の概念の復権の芽を量子力学と熱力学の操作的な理論構成の中に見出そうとします。

この論文集の中の平井さんによるベルグソンの時間観と不思議な符丁があります。キーワードは「観測者」です。

以下をクリックしてくださると、校正の方が可愛いと言ってくださった手書きの「マクスウェルの悪魔ちゃん」です。図3.2 マクスウェルの悪魔

我孫子サイエンスカフェ第50回 光は粒子か、波か、はたまた量子か?

11 8月

当カフェも50回を迎え、毎回60名以上の参加者があり

順調に推移しております。最近は、的確な質問が続いて出てくるようになり、進化していると自負しています。

http://abikoscience.web.fc2.com/

光と量子

50回目は、私自身が話しました。内容はPDFにアップします。途中で、手元実験として偏光板で楽しんでいただきました。

これは、光の物理、光の化学、光の植物学と続く光シリーズの第一弾です。9月8日には東工大名誉教授の市村先生に光化学スモッグとオゾンホール問題の解決、11月10日には、公立諏訪東京理科大の渡辺教授に、有機薄膜太陽電池によるビニールハウス発電の実験のお話をしていただく予定です。奇しくも、光学の基礎、応用、実用の順番にもなりました。3番目は、自然エネルギーを進める我孫子の会との共催です。

東工大地球惑星科学科授業 統計力学終了

3 8月

2019siken

8月1日に、上記科目の期末試験を行いました。

解答例をアップします。

統計力学という科目は、相撲でいうと押し相撲みたいなもので

勝つ時は一気で満点になるものだと、今年も実感しました。

統計力学をカードゲームで体得するという「大沢流手作り統計力学」を学生さんにしてもらいました。

結果は、大沢先生の書かれていることと違いました。カードの数vs人数がボルツマン分布にはならなく、

テールの先にピークが立つ結果でした。資本主義経済に例えると、漸近分布は一人の大金持ちとその他大勢というのが結果でした。

3年続きで同じ結果を得たので、真剣に考察し始めています。

発案者の大沢先生ご自身が他界されたので、ご相談できないのが残念です。

雑誌「現代思想」に佐藤文隆さんとの対談が掲載されました

27 7月

今年は、アインシュタイン生誕140年で、それを記念して特集号を企画したそうです。

佐藤さんも私も、学生時代アインシュタインは「過去の人」として扱われていました。時代は一巡りして、量子力学の観点からすると「時の人」かも知れません。

私は、対談でアインシュタインが、1905年の特殊相対性理論の時と1915年の一般相対性理論で、そのスタイルを大きく変えていることを強調したつもりです。そして、現代的な観点からすると、若きアインシュタインの優れた着眼点に注目すべきだと述べました。

 

東工大授業「物理と論理」

19 7月

標記のタイトルで、定年まで続けていた授業が、雑誌「大学の物理教育」2019年Vol.25 No2に掲載されました。

出だしだけ紹介します。

平成のある年のことである. 論理学の教授が私のところに来て、仙台に私の父の家を訪ねた思い出話を切り出しに、文理融合科目の総合Bの授業を依頼した. 文系の教員が理工系にパートナーを求めて共同授業をするという. 「物と事は区別ができないという定理を証明した」と称する人なので、面白かろうと快諾した. その後の成り行きで定年まで続けた. 全学の学生対象で毎回30人以上の受講者で結構盛況だった.